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プロフィール

なぜ、建築士が時計を語るのか

はじめまして。当サイト「僕の腕時計研究」の執筆・監修を務めます、momomoと申します。

私は東京で建設コンサルタントとして働きながら、一級建築士として日々、都市と建築という巨大な構造物に向き合っています。読者の皆様の中には、「なぜ建築の専門家が、腕時計のサイトを?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。畑違いに見える二つの世界。しかし、私にとって両者は、同じ一つの探求の対象なのです。

それは、「機能と美が織りなす、恒久的な価値を持つ構造物への探求」に他なりません。

建築が、土地という制約の中で、光や風、人の動線、そして構造力学という物理法則を調和させ、時代を超える空間を創造する芸術であるように、腕時計は、手首の上という極小の空間に、数百の部品と物理法則を凝縮し、寸分の狂いなく時を刻む、着用可能なマイクロ・アーキテクチャー(微小建築)です。

ル・コルビュジエが「住宅は住むための機械である」と語ったように、優れた時計は「時を計るための精密機械」です。しかし、両者が真に人の心を捉えるのは、その機能性を超えた先にある、造形美、歴史的文脈、そして作り手の哲学が宿るからです。

私がこのサイトでお伝えしたいのは、単なる時計のスペックや価格情報ではありません。一級建築士として培ってきた「構造」「素材」「歴史」「資産」という四つの視点を通して、一本の時計の奥深くに横たわる本質的な価値を「通訳」し、皆様の知的好奇心を満たすこと。それが、私の使命です。

このプロフィールが、皆様にとって、当サイトの信頼性を測る一つの「構造計算書」となれば幸いです。

構造と時間への探求 - 私の原点

私の価値観の根幹には、幼い頃から育まれた二つの興味があります。一つは「構造物への憧れ」、もう一つは「過ぎ去る時間への畏敬」でした。

少年時代、私が夢中になったのは、レゴブロックで複雑な城を組み上げることと、祖父の書斎にあった古い柱時計の振り子を飽きずに眺めることでした。ブロックの一つ一つが組み合わさって堅牢な構造物が生まれる様に、物理法則の美しさを感じ、規則正しく時を刻む振り子の音に、抗うことのできない時間の流れを意識しました。

大学で建築学を専攻し、一級建築士の資格を取得してからは、建設コンサルタントとして数々のプロジェクトに携わってきました。鉄骨のトラス構造が巨大な空間をいかに支えるか。コンクリートの配合が、いかにして100年後も変わらぬ強度を保つか。ガラスのカーテンウォールが、いかにして内部空間に光と開放感をもたらすか。日々向き合うのは、デザインという感性と、物理学・材料力学という理性のせめぎ合いです。

建築設計では、0.1ミリの誤差が構造全体の歪みを生むことがあります。素材の選定一つが、その建築物の耐久性、美観、そして資産価値を大きく左右します。例えば、ステンレス鋼にもグレードがあり、沿岸部の建築物には耐食性の高い素材を選ばなければならないように、時計のケースに使われる316Lや904Lといったステンレス鋼にも、明確な特性と目的の違いが存在します 。

また、バウハウスやアール・デコといった建築様式の歴史を学ぶことは、その時代精神を理解することに他なりません。その知識は、同じ時代に生まれた時計のデザイン――例えば、ジャガー・ルクルトの「レベルソ」が持つアール・デコの幾何学美や、ノモス・グラスヒュッテの製品に息づくバウハウスの機能主義――を、単なる意匠としてではなく、文化的な文脈の中で深く理解することを可能にしてくれました。

このように、建築の世界で培った「構造を分解して理解する視点」「素材の特性を見抜く眼」「歴史的文脈を読み解く知識」は、知らず知らずのうちに、私が腕時計というもう一つの「小さな建築」を分析するための、強力なレンズとなっていったのです。

時計という「小さな建築」との出会い

私が本格的に高級腕時計の世界に足を踏み入れたのは、30代後半のことでした。ある大規模建築プロジェクトを成功させた記念に、清水の舞台から飛び降りる思いで手に入れた、一本のクロノグラフ。それが、すべての始まりでした。

初めてその時計を腕にした時の、ずっしりとした重みと、肌に吸い付くようなブレスレットの感触。そして、ガラス越しに見える、複雑に絡み合いながらも完璧な秩序を持って動く歯車の群れ。それは、私が設計図の上で何千本もの線を描いて表現しようとしてきた「機能的構造美」そのものでした。

その日から、私の探求が始まりました。なぜ、このムーブメントは1秒間に8回も振動するのか(ハイビート) 。その振動数が、なぜ精度と摩耗というトレードオフの関係にあるのか。なぜ、このブランドは自社でムーブメントを製造することに、あれほどの情熱とコストを注ぎ込むのか。

書物を読み漁り、国内外のフォーラムを巡り 、ブティックに足を運んでは、専門家と議論を交わしました。それは、新しい建築様式を学ぶ時と同じ、知的な興奮に満ちた時間でした。そして、探求を深めるほどに、私はこの世界の「光」と「影」を目の当たりにすることになります。

市場には、巧妙に作られた偽造品や、異なる部品を組み合わせた「フランケンウォッチ」が蔓延しているという事実 。時計の資産価値が、経済状況や投機的な思惑によって、時に乱高下するという現実 。そして、多くの素晴らしい時計が、その技術的な価値や文化的な背景を十分に理解されないまま、単なるファッションアイテムとして消費されているという現状。

この状況は、耐震性能や歴史的価値が無視されたまま、見た目のデザインだけで評価されてしまう建築物に似ている、と私は感じました。そして、建築士として構造や歴史の重要性を説くように、時計の世界においても、その本質的な価値を正しく、分かりやすく伝える「通訳者」が必要だと確信するに至ったのです。

「僕の腕時計研究」が掲げる「4つの視点」- 私の分析手法

当サイトの信頼性を担保するため、私はすべての記事を、建築士・建設コンサルタントとしての専門性を応用した、以下の「4つの視点(知見エンジン)」に基づいて執筆・監修しています。

視点1:建築家として見る「機構と素材の科学」 建築家が建物の構造計算書を読み解くように、私は時計のムーブメントを「力の伝達システム」として分析します。ゼンマイが生み出すエネルギーが、いかにして輪列を伝わり、脱進機によって精密に制御され、針を動かすのか。その構造の合理性と美しさを、建築力学の視点から解説します。また、ケースやブレスレットに使われる素材を、材料力学の観点から評価します。チタンの軽量性、セラミックの耐傷性、ゴールドの展性といった特性が、時計の性能や着用感、そして美観にどのように貢献するのかを、科学的根拠に基づいて解き明かします。

視点2:コンサルタントとして見る「市場と資産価値」 建設コンサルタントの仕事の一つに、建築プロジェクトの事業性評価があります。土地の価格、建築コスト、そして将来の賃料収入や売却価格を予測し、投資対効果を算出します。この手法を応用し、私は時計を「着用可能な資産」として分析します。Chrono24やWatchAnalyticsのような市場データ 、Sotheby'sやChristie'sといったオークションハウスの落札実績 を定量的に分析し、特定のモデルの資産価値がどのような要因で変動するのかを考察します。憧れだけで判断するのではなく、長期的な視点での価値維持、そしてメンテナンスコストまで含めた「ライフサイクルコスト」を提示することで、皆様の合理的な意思決定を支援します。

視点3:歴史の探求者として見る「伝統と文化」 建築史を学ぶことは、単に過去の様式を知ることではありません。その建築が建てられた時代の社会、経済、文化、そして人々の価値観を理解することです。同様に、私は一本の時計を、そのブランドが歩んできた歴史の集大成として捉えます。なぜパテック フィリップは「親子二代にわたる時計」という哲学を持つに至ったのか。なぜロレックスは実用時計の王道を歩み続けるのか。ブランドのアーカイブや創業者の物語を深く掘り下げ、時計を文化遺産として位置づけます。これにより、皆様が手にする時計が、単なる工業製品ではなく、豊かな物語を持つ存在であることをお伝えします。

視点4:品質の守護者として見る「真贋と来歴」 建築の世界では、設計図通りに施工されているかを確認する「工事監理」が極めて重要です。鉄筋の数やコンクリートの品質が、建物の安全性を決定づけるからです。この厳格な品質管理の視点を、私は時計の「真贋とコンディション」の評価に適用します。文字盤の印字の僅かな滲み、ケースのエッジの仕上げ、ブレスレットの僅かな伸び。これらは、その時計が本物であるか、そしてどのような使われ方をしてきたか(来歴)を雄弁に物語るサインです。二次流通市場に存在するリスクから読者の皆様を守るため、偽造品を見抜くための知識や、信頼できる販売店の選び方 、保証書の重要性 といった、具体的で実践的な情報を提供することに全力を注ぎます。

読者の皆様へ - 信頼できる「通訳者」として

ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。

私がこのサイトを通じて成し遂げたいことは、究極的には非常にシンプルです。それは、皆様が高級腕時計を選ぶという行為を、単なる「高価な買い物」から、知的な発見と深い自己表現に満ちた、生涯忘れられない「旅」へと昇華させるお手伝いをすることです。

私は、皆様と同じように、一本の美しい時計に心を奪われる「一人の愛好家」です。しかし同時に、建築という分野で訓練された、構造と価値を客観的に分析する「プロフェッショナル」でもあります。この両方の視点を併せ持つ「時計の通訳者」として、皆様の情熱に共感しつつも、決して感情に流されることのない、公平で信頼できる情報を提供することをお約束します。

この「僕の腕時計研究」が、皆様にとって、複雑で奥深い時計の世界を安心して航海するための、信頼できる海図となることを心から願っています。どうぞ、ごゆっくりとサイト内を巡り、あなただけの宝物を見つける旅をお楽しみください。

momomo